
2017年7月3日
第1回渋谷おとなりサンデーが39か所で開催されました!
6月の第1日曜日を「ふだん話す機会の少ない近隣の人ともっと顔見知りになる日」にしませんか。
渋谷区のそんな提案から始まった「渋谷おとなりサンデー」。
渋谷おとなりサンデーは、1999年にパリで始まった隣人祭りをモチーフにしています。パリのアパートで発生した高齢の女性の孤独死。みんなが顔見知りであれば起こらなかった…そう考えた一人の青年の呼びかけにより、住民同士が集まる場が開催されました。すると同じアパート内で挨拶をしあう人が増え、そこから会話が始まり、子どもの面倒を見合うなどの交流が生まれていきました。そこから今日まで「隣人祭り」として、年に一回食べ物・飲み物を持ち寄って、集合住宅の中庭や近くの広場に集まる取り組みとして広がっています。
「隣に住んでいる人が誰かわからない」
「同じビルにいても隣のオフィスで働く人と話したことがない」
「顔を合わせていても、話すきっかけがない」
渋谷の街でも、こんな声が聞こえてきます。
区がこの取り組みを始める背景には、地域コミュニティの活性化に向けて「どうしたら渋谷区に住む・働く・学ぶ・訪れる人が知り合い、そこから新しいつながりを生み出していけるのか」という思いがあります。その上で考えたのは、隣人祭りのような食べ物・飲み物の持ち寄りに関わらず、普段なかなか交流する機会のない人と知り合いたいと思う誰もが、渋谷の街でやりたいことを気軽に企画したり、参加できるきっかけを作ることでした。
食事を持ち寄る交流会はもちろん、普段の活動をオープンにして誰もが来れる場にすることも、街での清掃活動も。自分なりの思いがあれば、誰もが企画することができます。
渋谷区の人、地域活動、建物や場所が可視化できるような機会をつくること。
これが渋谷版の隣人祭「渋谷おとなりサンデー」です。
この日をきっかけに住んでいる人、働いている人も近隣の人たちと新たに顔見知りになることで、平日の朝夕に心地よいコミュニケーションが生まれたり、万一の際にお互い協力し合える関係が生まれたり。渋谷の街で活動する人であれば、新しい仲間を増やすこともできるかもしれません。6月の第1日曜日の「渋谷おとなりサンデーの日」だけでなく、渋谷の街で交流の場が生まれていくことを目指しています。
5月12日に立ち上がった「渋谷おとなりサンデー」の特設WEBサイトにはさまざまなおとなりサンデーが投稿され、6月4日当日には区内39か所で「おとなり」さんと交流する場が生まれました。

「6月の第1週が近づくと、みんながそわそわするようなムーブメントをつくりたい」
2017年6月4日、晴天の空の下、発信拠点のSHIBUYA CAST.ガーデンには200人近くの人が集まり、長谷部健区長による開会宣言で幕を開けました。
この時、SHIBUYA CAST.内のパラソルが設置された席では、町会の方々が食べ物や飲み物を持ち寄って集まってきました。そして、代官山朝活ランニングをしている皆さんが通りかかる姿も。
各所でさっそくおとなりサンデーが始まる中、トークセッションへと続きます。

「みんなが「集まれー!」って言う側になったらいい」
トークセッションは、長谷部区長、「渋谷のラジオ」理事長の箭内道彦さん、東京理科大学教授/シビックプライド研究会代表の伊藤香織さん、渋谷おとなりサンデー運営事務局の青木優莉さんの4名によって行われました。
おとなりサンデーの基本は「手間がかからないこと」。手軽に簡単にできる手段で、近隣の方と交わってほしい。とはいえ、一度も話したことのない近所の人たちと関りを持つのはハードルが高いものです。



仕事でこれを任されているとか、家族を支えているとか、趣味の友達の間では一目置かれているとか、皆さんが持つそれぞれの自負を、まちの中でも持てると思うんです。箭内さんが「全員が主催者になればいい」言うように、場所を持つ人はそこを開いたり、得意なことがある人はそれをやってみたり、ちょっとしたことでもいいので自分でもできることをやってみる、というのがいいきっかけになるのでは。
例えばピクニックは誰にでも色々な工夫ができます。持ち寄る食材を地元のものに限定したり、犬と一緒に集まったり。自分なりのやり方を模索し、そこで新たな出会いがあると、コミュニティが生まれ、文化が育っていきます。

僕自身はストリートカルチャーに揉まれて育ってきました。おとなりサンデーの推進によって、多くの人が交わり、新しい文化を発信できる機会を提案することでコミュニティを強くしていきたい。
今回立ち上がったおとなりサンデーの内容はどれもバラバラです。どんぐりを拾ったり、清掃をしたり、モスクを見学したり、ベリーダンスをやってみたり…みんな好きなことを好きなように好きな場所でやっています。同じ興味を持つ人同士が繋がり始めたおとなりサンデーの様子を、実際にまちに出ていくつか見てきました。
みんなで渋谷の子育てについて 「わいガヤ」しよう!
渋谷papamamaマルシェは渋谷で0~3歳のお子さんの子育てに奮闘しているパパ・ママが、『タテ・ヨコ・ナナメのゆるやかなつながり』を持つために企画されたイベント。
年に一回大開催している大きなマルシェには、情報交換したいこと、話し合いたいテーマをはっきり持つ人も多く集まります。そうすると話は深まる一方で、他のパパママとただ話してみたい、という人にはハードルが高いかもしれない。そこで、今年からは気軽に参加できる小さなマルシェを定期開催することにし、今回その1回目を迎えました。
Facebookページ、渋谷区のLINE、ともだちの紹介、様々な経由から参加した15家族。特にトークテーマを設けず、子どもたちを遊ばせながら代々木公園でピクニックをしようという企画どおり、のんびりとした空気が流れます。持ってきた食べものをつまみながら、お互いの子育て生活をわいわい話す時間となりました。
Picnic in Tokyo
公園でのピクニックで食べるパンやコーヒーを買いたいとき、まちにどんなお店があるか知らないと、コンビニで買って済ませてしまうこともあります。せっかくなら、公園とまちを両方楽しもう!というPicnic in Tokyoの企画には、富ヶ谷をよく知る人から「渋谷にはたまに遊びに来る程度」だという人、台湾からの留学生まで参加していました。富ヶ谷在住の方に、子どもたちが思い切り遊べる場所「渋谷はるのおがわプレーパーク」を案内してもらったり、コーヒーやパン、ジェラート…富ヶ谷のおいしいものをみつけた後は、いよいよ代々木公園内のバラ園に向かいます。
公園を取り囲むまちを知ってから行う、ユニークなピクニックでした。
「サッポロ広場」の芝生スペースを楽しもう
恵比寿ガーデンプレイス内にあるサッポログループ本社棟前の「サッポロ広場」。この日は特別に芝生スペースが解放されました。
「いつも、”ここに入りたいね”と話しながら通り過ぎていた芝生が解放されていたので、嬉しくて入ってきました」と言う親子連れの方をはじめ、ご近所の方が多く集まりました。芝生をはだしで駆け回わる子ども、芝生のはしに設置されたパークライブラリーの本を座って読む人、樹木のプレートづくりワークショップに参加する親子、それぞれが晴天の空の下、芝生を思い思いに楽しんでいました。
「恵比寿のオフィスの多い場所に住んでいるから、近所付き合いといったら飲食店や商店の方でした。今日のように家族同士が触れ合う場は新鮮です」と話すお父さんの姿も。
外国人観光客のゲストと広尾商店街マーチャントウォーク
(商店巡り)
YumeさんをはじめとするAirbnbホストが集まり、Airbnbを利用する外国人観光客の方、渋谷おとなりサンデーを通じて参加した人たちと商店街巡りをしました。
密集する家の隙間にある道を縫って巡るのは、「商品よりも人を見てほしい」というYumeさんが商店街で見つけたチャーミングな人々のお店。
観光スポットでは見られない、そこに住む人々の日常生活を垣間見ることができるツアーは、広尾を訪れたことのある日本人にとっても新鮮なものでした。
渋谷クリーンウォーク作戦
~成功すればビアガーデン1杯無料!~
渋谷区に本社を置くシダックスグループと東急百貨店本店が連携した企画。神山商店街のゴミ拾いを約1時間した後、東急百貨店本店屋上にある「プレミアムビアガーデン」に移動し、青空の下でみんなで乾杯をしました!参加する方々を見ていると、どうやらシダックスと東急百貨店の社員さんも多く参加している模様。実は、東急百貨店の社員食堂やレストランのいくつかはシダックスが運営をしているため、以前から交流があったんだとか。今回のおとなりサンデーでは、両社の新入社員の方々が参加していました。今後は地域の人たちとだけでなく、会社間の交流の場にもなっていきそうです。
来て!見て!触って!? 〜はじめてのLGBT〜
渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員を務めるトランスジェンダーの杉山文野さんと一緒に、ひとつのテーブルを囲んでざっくばらんにお話しする2時間。
1対多数の講演会だと、参加した人は聞く側に徹してしまう。ワークショップだと、自分の意見を持っていないと参加しづらい。今回のように、5~6人で話ができる時間は、気軽に疑問を投げかけたり、自分の思いを伝えてみることができる、貴重な時間となりました。
1日を通して感じたことは、そこに集まる人たちがとてもリラックスしてのびのびと過ごしていたこと。それは、それぞれの主催者が気負わずに「自分でもできること」をしているからかもしれません。それが小さなことであっても、参加すると普段気が付かない発見があり、まちに自分の居場所が増えていくのを感じます。
日本にも町会や長屋の文化があるように、近所で解決できる社会課題はたくさんあるはず。今回の渋谷おとなりサンデーで、初回にも関わらず39の交流の場が立ち上がったのは、潜在的に「おとなりさんと繋がりたい」人がいたからではないでしょうか。
昔から住む人、新しく越してきた人、働く人、学生時代に住んでいた第二の故郷として時々遊びに来る人…渋谷には様々な人が行き交っています。
その時々に生まれる新しいおとなりサンデーと、変わらずに残っていく文化が混ざり合いながら、渋谷ならではのムーブメントが育っていくのではないでしょうか。