2021年12月28日
【PICK UP! LOCAL ACTION】#10 富ヶ谷2丁目の写真展
「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域活動を取材し紹介していく連載です。2021年6月の地域交流・地域活動強化月間は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。
今回取材したのは、富ヶ谷2丁目の方々による、富ヶ谷2丁目の方々のための写真展「Tomigaya 2chome Style」。会場に入ると大きなポスターがずらりと並んでおり、そこに写っているお一人おひとりが、それぞれの輝きを放っています。どうやら、富ヶ谷2丁目のシニアの方々にとって写真を撮ってもらうことは、日常がより明るく照らされる時間らしい。ここが、今回紹介したいユニークなポイント。いったいどのような思いから、この活動が行われたのでしょうか。ふだんからシニアの方々との交流が深く、今回の発起人となった中島さん、フォトグラファーのボクダさんに、お話を伺ってきました。
好きな服、好きなメイク、好きな場所で。
11月下旬。ラジオ体操の帰りに通った街路樹が色を落としかけているのを横目に、私たちは富ヶ谷2丁目町会会館へと向かいました。まず目に飛び込んできたのは、華やかな紫色の羽織りにエレガントなワンピース、そこにきてスポーティな帽子と靴を合わせるという洒落っ気を見せる、笑顔が素敵な女性の姿。
奥へ進むと、素敵なお召し物、まばゆいアクセサリーを身につけた女性たちの姿が目にとまります(アンティークのアクセサリーって、年を重ねるほど、似合っていくものですよね。羨ましいなぁ)。そのポジティブな表情やたたずまいからは、お一人おひとりが重ねてきた年月の厚みが感じられますし、「こんな風に生きていけるなら」という勇気のようなものいただいた気がしました。さらに、年齢の欄に「101歳」と書かれた方が2人も!中島さんは、キャプションに年齢を書くかどうか迷ったそうですが、「写真を観た人たちが、自分も頑張ろうという気持ちになるかもしれないから」と、年齢を出してもらうことにしたそう。見ているこちらも、背筋がピンっと伸びるようです。
全体を見渡してみても、皆さん素敵。いや、かっこいい。ボクダさんに撮影の裏側について聞いてみたところ、とくにメイクさんやスタイリストさんに協力してもらったわけではないそう。それぞれに、「好きな服を着て、好きなメイクをして来てください」とお願いしたそうです(自分が一番素敵に見える姿を知っているのもまた、羨ましい)。そして撮影はすべて、住み慣れた富ヶ谷2丁目のどこか。ロケーションは、ボクダさんが選んだそうです。
(なかには、ご夫婦で写っている方もいらっしゃいました。)
おしゃれをすると、いつもとちがうドキドキがある。
では、今回の写真展「Tomigaya 2chome Style」は、どうしてこのような名前が付けられたのか。それはこの写真展が、「アドバンスト・スタイル」という映画の上映会をきっかけに始まったからでした。アドバンスト・スタイルは、年齢を重ねながら自分のスタイルを確立した60歳以上のマダムたちが主役の、ドキュメンタリー映画。ニューヨークを舞台に繰り広げられる彼女たちのカラフルでパワフルな生き様を見ていると、ポジティブな気持ちになってきます。
コロナ禍で交流がしづらいなか、それでもシニアの居場所をつくろうと思った中島さん。プロジェクターの手配などはボクダさんが行い、この映画の上映会を開くことになったのです。会場は、今回と同じ町会会館。上映会が終わると、観てくれた人たちの間で「これはいいね!」「たまにはおしゃれも大事だよね」という声が続々とあがりました。そこで勢いそのまま、「やりましょう!」と中島さん、ボクダさんは動き始めたのです。
(写真左の真っ白の服の女性は、今回のメインビジュアルに起用された方。この日もすごくおしゃれで、思わず話しかけてしまいました。)
「口紅を付けただけで、気持ちは変わるもの」と中島さん。ふだんのありのままの姿もいいけれど、たまに気合いを入れておしゃれをすると、いつもとはちがうシャキッとした気分になって、日常にもメリハリがつくもの(わかるなぁ)。
お一人あたりの撮影枚数は、約500枚。今回撮影したのは富ヶ谷2丁目に住む17人のシニアの方々でしたが、まだまだ、「撮ってほしい」という人はたくさんいるそうです。この活動がさらに続いていく予感が、すでにしています。
「富ヶ谷2丁目スタイル」から、「渋谷区スタイル」へ。
最後に、中島さんとボクダさんに、今回の写真展の感想やこれからへの思いについて伺ってみました。「撮っていても、見習いたいと思う瞬間ばかり」とボクダさん。また撮った写真が本人だけでなくご家族にも喜ばれることがあり、この活動に関われてうれしいということを、しあわせそうに話してくれました。ボクダさんのこうしたまなざしがあるからこそ、富ヶ谷2丁目の方々がいっそう輝いて見えるのでしょう。
また「シニアは行動範囲が限られている」と中島さん。写真に撮ってもらう、おしゃれをする、ということを通して、フレッシュな気持ちを再確認できる場所づくりをしたいのだと教えてくれました。さらに、「今度は渋谷区役所でも写真展をやりたい」「富ヶ谷2丁目という範囲を超えて、渋谷区スタイルとしてこの活動の輪を広げていきたい」と、やりたいことがどんどん出てきます。また本家のように、写真集にまとめていきたいそう(めちゃくちゃいい!)。冊子にすることで、身につけているものへの思いや生き方の哲学も添えることができるはずだと話してくれました。
(左:フォトグラファーのボクダ茂さん、右:中島珠子さん。手に持っているのは、アドバンスト・スタイルの写真集です。)
もっと撮りためていけば、もっと富ヶ谷2丁目のスタイルが見えてくるはず。そしてこの街が、渋谷が、もっともっと、輝いて見えてくるはず。おしゃれで、自立していて、豊かで、かっこいい。そんな都会的なシニアの表情を、もっともっとたくさんの人に見てもらえたらな、と思わずにはいられませんでした。
渋谷区には、まだ知られていない地域活動がたくさんあります。渋谷という地域のことを知りたい人も、おとなりサンデーが気になるという人も、引き続き「PICK UP! LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!
テキスト:家洞 李沙(Fan club)