
2018年7月4日
渋谷区おとなりサンデー 2018年6月3日のレポート<前半>〜まちの人が、自分のまちで繋がりづくり〜
突然ですが、あなたは普段、自分が暮らす・働くまちで、どのくらいご近所づきあいをしていますか?
渋谷区では、6月3日を「渋谷おとなりサンデーの日」、さらに6月は「地域活動の強化月間」として、渋谷区に住む人、働く人、学ぶ人、遊ぶ人たちが、まちのあちこちで思い思いの交流の場を企画し、地域コミュニティの活性化に取り組みました。
2017年に第1回が行われ、今年は2回目。この取り組みは、フランス・パリの「隣人祭り」がヒントになっています。
高齢者の孤独死をきっかけに、アパートの住人たちが隣人同士のつながりをもとうと、持ち寄りパーティーを始めました。
そこから、アパート内で挨拶が生まれ、交流がはじまったそうです。
小さなアクションから生まれた「隣人祭り」。今では、ヨーロッパに広がるムーブメントになっています。
今年集まった企画は、全部で103個。
そのうちのいくつかにお邪魔してきました。その様子をご紹介します。
余談ですが、今回レポートを担当する楢侑子、とある飲み会で「渋谷おとなりサンデー」の存在を知り、企画を出すことを即決。自身の企画(6/9に実施)を準備していると、渋谷おとなりサンデー事務局の方とつながり、今回の「レポート」のご依頼をいただきました!
何からなにまで「おとなり力」高めのスタートです。

9:30 【笹塚】スポーツごみ拾い・区長の開会宣言
自分のまちを、いつもと違った視点で観察すること。
渋谷区内のうち、ひとつのエリアをフューチャーしようということで、今年は「ササハタハツ・エリア」(笹塚〜初台)がその対象エリアです。
朝から、笹塚で行われる「チームササヅカ&スポーツGOMI拾い大会」の開会式と、区長による「渋谷おとなりサンデー開会宣言」が行われるということで、一番にやって参りました。
…ところで、朝から、すごい人出です!


晴天に恵まれた当日、じりじり照りつける夏日もなんのその、スポーツごみ拾いにエントリーしたのは27組、100人以上が広場に集まっていました。近所の銀行や飲食店に勤める人、近隣に住むご家族など、笹塚との関わりは人それぞれ。だけど、たくさんの人が集まるだけで、なんだか楽しい。そしてパワーが生まれます。
渋谷区長からは、自らスポーツゴミ拾いに参加したときの体験を踏まえてこんなアドバイスが。
「ゴミは、まちの片隅に、隠されるように捨ててあります。ゴミを捨てる人の気持ちになってみてください。まちをいつもと違った角度で観察すると、どんどんゴミが発見できますよ」

目的は「ゴミを、みんなで楽しく拾って、綺麗なまちにする」ことですが、「いつもと違った角度でまちを観察すること」それって、「おとなり力」に欠かせない視点なのでは?
取材メモに書き付けて、次の場所へ向かいました。
11:00 【初台】初台緑道で町会がバックアップするたくさんの企画
初台では、2017年に始まった「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」に参加する住民が発案した企画を、初台町会がバックアップして、この日を迎えました。

11:05 緑道でバーベキューを!
都市から隔離された「火」を、楽しく体験。
企画人の片山誠さんは、「昔使っていたキャンプ道具やBBQコンロを、引っ張りだしてきました」と、大汗をかきながら炭火おこし。 以前は、清瀬に住まわれていて、河原でよくBBQを楽しんでいたそうです。
「焚き火や炭火をおこせない人、最近多いんですよ。遊びながら“火”に触れてもらい、大地震や未曾有の事態にも備えられたら」と。

都心の公園では「火気厳禁」が当たり前となって久しく、家庭でも電子調理器が台頭するなど、「火」がどんどん遠い存在になっています。
平常時の都会ではそれが「正」だとしても、「人間」という生物のあり方を考えたときに、どうでしょうか?ひょっとして、これって、文明の退化!?
…とにかく、都心でありながら、火の力を身近に感じることができる炭火BBQは、美味しくて楽しい、さらにみんなでワイワイ、おとなり力も高まりますので、大賛成です。

具材は持ち寄りスタイルで、私が訪れたときは真っさらの天板でしたが、その後、40名近くの方たちがBBQを楽しんだようです。
11:20 初台子ども遊びたい会
外遊びは学区を超えて、時代を超えて。
緑道を歩いていくと、大賑わいの空間が!


フラフープを回したり、大縄跳びを飛んだり、子どもたちだけでなく、大人も一緒になって遊んでいます。


こちらは、10年以上もまちの活動を続ける小古田宏子さんが主催する企画。

「子どもたちに、スマホやゲームだけじゃなくて、身体を使って遊ぶ中で、成功したり、失敗したり、友だちと仲良くなる体験をしてほしくて」
初台近隣には小学校区がふたつあり、交互に開催しているとのこと。
「違う学区にも遊びにきてくれる子どもが出てきて、学校を超えて友だち同士になっていきますね」
今回は商店街の告知などを見ていらっしゃった、小学生に満たない、小さなお子さんもたくさん遊びに来ていました。
そんな小古田さんは、初台のご出身なのでしょうか?
「両国で生まれたのですが、戦後、滋賀へ引っ越して。兄と一緒に、また東京へ出てきたんですよ。初台は本当にいいところ。人柄もいいですし」
優しくて素敵な笑顔で笑われます。色々な歴史を経て、今、初台で、子どもたちのために長縄を回す小古田さん。その後ろに、色々な歩みがあったのだろうなぁと、想像しました。

11:30 初台町会 山﨑徹会長
リタイア後の人生、ここにあり!?
初台緑道の日常は、犬の散歩をする人や、ウォーキングをする人、通勤通学と通りがかる人などがちょこちょこ歩いているイメージでしたが、この日はとにかく人が大勢います。
「すごい賑わいですね!」と、初台町会の山﨑会長に話しかけると、いろいろ教えてくれました。
「まちづくりフューチャーセッションの取り組みが形になっています。町会は、『やりたいことがあるなら、とにかくやってみよう!』と住民へ声をかけ、企画が実現できるように全面的にバックアップしました。今回はトライアルなので、この先企画がどうなるかは分かりませんけどね。けどまぁ、何かしら続いたらいいですよね」

バックアップ体制抜群、かといって強制力もなく、懐深い町会で、住民さんたちがうらやましいですね。
会長は、初台での暮らし、そして町会での活動が長いのでしょうか?
「中学の頃初台に引っ越してきまして。その後サラリーマン時代などは、まちを離れることもありました。当時はとても忙しくて。町会へは、会社をリタイアしてから参加させてもらってます」とのこと。
その笑顔からは、今だからこそ出来るまちとの関わりを、楽しんでおられることが伺えました。
「初台は、都心でありながら、商店街があり、神社のお祭りなど村落の名残もあり、だけど新しいマンションもあり。多世代が入り組むよいまちですよ」

それにしても、ビル群を足早に歩くサラリーマンの姿と、山﨑会長の笑顔、どちらも日本の現実でありながら、その日常が重なりません。人生の中で切り離されたフェーズが、もう少し緩やかに繋がるといいのにと、思ったりもしました。
11:40 さわやかスペース 初台美術館
まちのアーティストが、まちの人を笑顔にする
「パフォーマンスロード、好評ですよ!ぜひ、見ていってください!」と山﨑会長に言われて初台出張所内の会議室に足を踏み入れると、素敵なフルートの音色が鳴り響いていました。


さらに絵画や、写真や、木工作品などがきれいに並び、奥の机では、折り紙教室が。
「わたし、これ折りたい!」
「わたしは、これ」
「じゃぁ、順番にやりましょう」
といった具合に、みんなで相談が行われています。

次から、次へとちょこちょこ人が入ってきては、作品を指差したりしながら、自由に鑑賞しています。
「緑道はお散歩コース。今日はたまたま通りがかって寄ってみました」という親子は、満面の笑みで作品類を眺めていました。

いつものまちで、いつもの散歩コースで、アートを通じてのハートの交換。とっても心が温かくなるものでした。
11:50 種の交換会&持ち寄りごはんでおしゃべり会
やってみて気づいた、まちの奥行き
企画リーダーの古川はる香さんは、ササハタまちづくりフューチャーセッションに参加していたところ、他の方が発案された企画を、気が付いたら担当することになっていたそうです。

「子育てをしていると、植物や野菜を育てることにも興味がわいてきて。でも自分ではあまりやったことがないんです」
さらに、こんなこともお話くださいました。
「活動する中で、町会やPTAなどの繋がり、知り合いが増えて、「まちの人がこんなにも色々と尽力してくださっていたことに気がつきました」
芽が出たのは、緑だけじゃなく、地縁も、というところでしょうか。若い人の参画は、まちや、チームに活気をもたらすので、みなさんも喜んでおられるように思います。


番外編 ふれあいサロン「めだかの教室」
大切な「平和」を見つるひととき
緑道を中心に盛り上がっていた初台町会の企画ですが、少し離れた初台通りの中ほどにも、素敵な催しが。


毎月2回、地域住民が集うふれあいサロン「めだかの教室」が、この日は「渋谷おとなりサンデー」特別バージョンを開催。いつものようにお抹茶とお菓子を振る舞いながら、「戦争と平和」のビデオ上映会を行ったそう。
50人もの人が訪れ、「平和」について、真正面から見つめる良い機会になったようですよ。
12:30 みんなで公園にいこう!
無理はせず、できることを、とにかく楽しく
さて、初台から移動して向かった先は、参宮橋。

駅からすぐの参宮橋公園で、おはじきや、メンコ、けん玉、紙芝居などの昔遊びが行われていました。



企画発起人の石田美家子さんは、子育ての過程でPTAに入り、地区委員や青少年委員など、地域の役割を30年以上担ってこられました。

「昨年、おとなりサンデーが始まったときは、渋谷のCASTまで偵察に行きました。今年は何かやろうと、仲間に声をかけました」
石田さんは「たいしたことができなかった」とおっしゃっていましたが、それでいいし、それがいいと思いました。主催者が無理なく楽しんでいると、お客さんも楽しくなります。自転車や徒歩で、どこからともなく親子連れが次から次へとやってきます。

少し違う遊び道具が加わるだけで、少し違った公園の景色が生まれて、そこへ人が集まってくる。素朴で、とても素敵な景色でした。
正直な話、自分が住んでいるまちで生きることプラスαの活動をすることって、とても素敵で、一方でとても難しい側面もあると思います。
住んでいるまちだからこそ、人の目が気になったり、誰かに何かを言われるのは煩わしかったり。波風立たせず、淡々と生きていくこともできます。
だけど、この日、素敵な笑顔や賑わいが生まれていたのは、間違いなく一歩踏み出して表現した渋谷区民のみなさんの力だと感じました。
参宮橋を後にするとき、石田さんが「次はどこへ行くの?渋谷?だったら、駅を超えて、大通りを渡ってすぐのところからバスが出てるよ!」と教えてくれました。
「渋谷区おとなりサンデー」の取材っぽくて、気に入ってるエピソードだったりします。
渋谷区行脚のレポートは、後半につづきます!